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第9話 性奴隷に死を

Author: 月歌
last update Last Updated: 2025-07-10 10:07:17

(青山竜一 視点)

風俗店が立ち並ぶ一角に、『かさぶらんか』という名の花屋があった。だが、その表向きとは裏腹に、地下では違法風俗店が密かに営業されていた。

この花屋と地下店の経営を任されていたのが、おやじの愛人の一人である三原沙月(みはら さつき)だった。彼女は地下店の店長として、長らくこの場所を仕切っていた。

そして――その違法風俗店こそが、速水が初めて働かされた場所でもあった。

おやじがその風俗店を訪れたのは、愛人である三原沙月のご機嫌伺いのためだった。

一方、店長を務めていた三原もまた、組長の機嫌を取ろうと、“初物”の速水をおやじにあてがったにすぎない。

だが、三原の思惑に反して――おやじは速水を気に入り、屋敷に囲ってしまったのだった。

それは、三原にとって屈辱的な出来事だった。

彼女は、男相手に身体を売る性奴隷たちを、いつも軽蔑の眼差しで見下していた。

愛人という日陰の立場に甘んじながらも、性奴隷たちを自由に支配できることが、彼女にとって唯一の優越だった。

ときに、彼女はその立場を利用して、彼らにひどい扱いをすることもあった。

だが――その軽蔑の対象でしかなかった性奴隷の一人、速水が、組長の目に留まり、囲われ者となったのである。

三原沙月はおやじとの間に子がいた。息子の名は三原進(みはら すすむ)。彼は愛人の子供という理由だけで、組の屋敷に入ることを許されなかった。にも関わらず、囲われ者の速水は屋敷に部屋を与えられ住んだいる。その現実が彼女の心を捻じ曲げた。

おやじは愛人の三原と性交を持った後には、必ず『かさぶらんか』で自ら花を選び彼女に花束を作らせ速水への土産とした。

三原にとってその花束を作る事は屈辱的な行為だった。

セックスの余韻に浸る暇もなく、囲われ者の為に花束を整える。その繰り返しが彼女の心をむしばんでいった。

ーーそんなある時、彼女は稚拙ないたずらを思いつく。

三原は、花束の中に一つの細工を施した。

女性用の剃刀――安全刃のない、むき出しの鋭い刃先。

それを、嫉妬心を込めて、美しく束ねられた花々の間に忍ばせたのだった。

あたかも、花の香りに酔ったその指先が、偶然触れてしまうのを、密かに願うように。

三原にとっては普段のうっ憤を晴らす為のいたずらに過ぎなかった。悪意のあるその刃先が、速水の指先をほんの少しでもかすめてくれたならーー。

だが、自殺を
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